ISBN:4838715803 単行本 奥山 貴宏 マガジンハウス 2005/04/14 ¥1,470

鼻から煙でそうだった。すっごく面白かったよ、奥山くん。

自伝的な小説で、「オレは31歳で風邪をこじらせたと思って病院に行ったら末期の肺がんで余命2年と宣告された。でも、死ぬという事実より、みんなから忘れられるということのほうが、怖い」と主人公は言う。

奥山くんはフリーランスのライター。ガン宣告を受ける前から自身のサイトをもっていて、ガン告知を受けてからの日記を出版して爆発的にサイトのアクセス数はのびていった。

私が彼を知ったのは最初に出た「31歳ガン漂流」を読んでから。

「今日は、オレの誕生日。多分人生で最後の、オレの誕生日。」

なんて書く彼のブログを毎日チェックしていた。そして、今年彼が亡くなったのを知った。享年33歳。

亡くなる数日前に発売された彼の初めての小説、「ヴァニシング・ポイント」。きっと、書いていた奥山さん自身も体力がなくなっていたのだろう、短く区切られた一章一章。それにつけられた数字がゼロにむかってカウントする。

鬼気せまる文章だったなあ。夜中に読んでいたんだけど、すぐそばに主人公である奥山君が立っているような気がした。背が高くて飄々としてて、でも不遜な空気を発散させてて・・。んでニヤニヤしながらこっち見てるの!!
「うわああ、いる!!そこにいるでしょ奥山君!!」って、ツッコミたくなるようなそんなオーラ。輪郭がわかるようなオーラ。

間違いなく、「なにか」が行間から漂ってる。怖ささえ感じるくらいに。

クラブでクスリをきめて、バイクで暴走して・・・。仕事での焦燥感や自身を覆った絶望。そしてそれを糧にして飛ぼうというそのエネルギー。

テレビで見た奥山君は病状が進行するにしたがってどんどん細くなっていって・・・・でもシニカルでユーモアがあって、毒舌なのは変わらなかった。瞳はいつもギラギラしてて、身体が精神を縛る檻という感じがした。その檻のなかで猛禽な獣がこちらの寝首をかいてやるチャンスをうかがっているという気すらした。


今まで「死」を真剣にとらえてこなかったけど、彼の矜持には学ぶところがたくさんありました。

あとね、ぶっちゃけ奥山君すごいカッコイイ人でした!・・もう、新作が読めないのが悲しいな。

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